東日本大震災から、既に3年余りの月日が経とうとしていますが、大きな被害を受けた東北地方では、未だに仮設住宅での生活を余儀なくされていらっしゃる方々もおります。被災された皆様の安全と被災地の一日も早い復興を願うばかりです。
平成26年4月25日の政府地震調査委員会の発表によりますと、関東大震災を引き起こしたようなマグニチュード8前後の大地震が、関東地方で今後30年以内に発生する確率は最大5%、マグニチュード7前後の地震が発生する確率は70%程度であり、「規模の大きな地震はいずれ起きると考えて防災対策を着実に進めてほしい」とされています。
震災は地域生活にも多くの課題を残しました。私たちの住む松戸市も例外ではありません。今、私たちがなすべき事は一体どんな事でしょうか?今回の市政報告では、防災にかかる松戸市の取り組みについてお知らせしたいと思います。
現在、災害時に一時避難できる場所は、松戸市内に130カ所あります(表1)。
六実近隣を例にとりますと図1に示す場所となりますが、「災害時はまず学校に避難する」と覚えていただければ間違いがありません。学校は一時避難を受け入れるだけでなく、皆さんの住む家屋が不幸にも倒壊したり火災で焼失してしまったりした際の収容避難場所を兼ねているからです。
災害の直後は電話回線の輻輳などにより、家族や知人と連絡を取りづらくなります。災害発生時にどこに避難するか、あらかじめご家族で話し合い、取り決めておくと安心です。
大規模災害が発生した際は、その規模に応じて自宅で生活ができなくなった市民の皆さんが当面の生活を送る場所として、避難所を開設する必要がでてきます。
避難所の利用は、家屋の倒壊や焼失によるものだけではありません。たとえば道路の破損や大規模工場の被災などにより流通が長期的にストップしてしまった場合などは、たとえ自宅が無事であっても避難所に出向いて水や食糧の供給を受ける必要が出てきます。
避難所では、避難者が共同生活を送ることになります。普段のような生活を送る事はできず、生活は確実に不便になります。慣れない共同生活の中ではストレスも溜まるので、少しの事でトラブルが発生するかもしれません。
図2は、避難所の運営に際し考慮しなくてはならない事柄を幾つか列記したものです。これはあくまでも一例ですが、これを見ただけで、考慮しなくてはならない事が多岐に渡る事がご想像いただけると思います。
そのようなトラブルを未然に防ぐためにも、大規模災害が発生した際の避難所運営に際してはルールの取り決めと、ルールの遵守が求められます。
ところで、皆さんは災害時の避難所運営を誰が行うかについて考えた事はあるでしょうか?「それは当然、市役所の仕事でしょう」とお考えになる方が多いかもしれません。
図3は、災害発生時に市役所が果たすべき機能の概要を示したものです。災害は多くの建物や生活のインフラを同時に破壊するだけでなく、迅速な情報収集を行わないと二次的・三次的な被害をもたらします。また、先々を予見し予防対策を講じないと、その被害は加速度的に増大する恐れがあります。このように、災害時に市役所は市民生活を守るためのコントロールタワーになる必要があります。
その業務量は膨大である事が予測され、過去の事例などを鑑みると、通常業務の多くを縮小しても、短期的長期的に人員不足が発生します。
市民の皆さんが生活を送る避難場所の運営は最も大切な事の1つですが、災害時に限られた人員の中で市役所に全てを望むにはどうしても限界があります。過去の震災の事例を紐解くと、震災時の自治体職員は不眠不休で業務にあたり、実際に疲労で倒れた職員、過労死した職員のニュースが後を断ちません。
おわかりになるでしょうか?
災害時の避難所運営は、市民の皆さん自身が中心となって、自主的に運営していただく必要があるのです。
しかし、いきなり「避難所の運営をお願いします」と言われても、なにをどうすれば良いのか分からない部分が多いと思います。
東日本大震災から3年経つ現在でも、市民の中に「被災時の避難所運営は私たちで行うのだ」という自覚を持っていただけていないのが現状です。これは、皆さんというよりも、私をはじめとする市側の責任が大きいと考えております。
いつ災害が発生しても円滑な避難所運営を行えるようにするには、平常時からの準備や、ひとりひとりの意識の高まりがとても大切な事だと思います。
ここで1つ、円滑な避難所運営に向けた試みを紹介します。
この会議は、開催より既に半年が経過しましたが、市役所からの情報提供や他市事例の紹介、市民の皆様との闊達な意見交換、防災ゲーム『避難所HUG』(文末参照)の体験などの中から、次第に避難所運営の形が見えてきています。
この会議には私も参加させていただいていますが、回を追う毎に皆さんの意識が高まっていくのを間近で感じられます。
会議に出席しながら、改めて感じた事があります。それは、自助・共助の大切さです。
自助とは「自分の身は自分で守る」ことで、共助とは「仲間が共に助け合う」ことです。
大規模災害では何が起こるかわかりません。各町会長の皆さんなど、平時に地域で頼りにしているリーダー的存在の人ですら、無事とは限りません。長い期間、家族と離れ離れになってしまうかもしれません。避難所では多くの人と生活を共にするため、普段は経験しないような人間関係のトラブルに見舞われるかもしれません。
私は、このような時に活きてくる事こそ、普段の地域での連携や人間関係なのだと考えています。
想像してみてください。災害時、避難所に集まった人々のほとんどが知り合いだったら、殺伐とした避難所の中でもほっと一安心できませんか?
反対に、避難所にいる殆どの人の顔を知らなかったら、どうなるでしょうか?人混みの中にいながら、孤独になってしまうのではないでしょうか。
有事には、困難を共有できる知り合いが多ければ多い程安心できるでしょうし、知り合いの殆どいない環境ではストレスの溜まり方も大きくなるのではないかと思います。
また、自助・共助の素晴らしいところは、たとえ災害が発生しなくとも、皆さんの生活に良い影響を与える事です。
たとえば防災会議を通じて地域の皆さんとの連携が図れる事、防災訓練の中で、町会の人々と顔見知りになり挨拶するようになる事。1つ1つは小さな変化かもしれませんが、こういう小さな事の積み重ねの中から、他の地域課題をも解決していくための連携が芽生えて行くのではないかと考えます。
防災のための備えは、市役所だけで行ってしまえば、災害が発生しない限り使用する事の無い「高い保険料」になってしまいがちです。そういう防災は、震災の記憶が薄れてしまえば、次第に立ち消えてしまうかもしれません。
それを普段の皆様の生活に活かせるよう、防災の構えを風化させる事のないよう、石井いさむは今後も「自助・共助に根付いた防災態勢づくり」を推進していきたいと考えております。
避難所運営会議は今後、他の学区にも展開して行く予定です。皆様の地域で開催する際には、積極的なご協力をお願いいたします。
もし、あなたが避難所の運営をしなければならない立場になった時、最初の段階で殺到する人々や、同時に多発する様々な出来事・トラブルにどう対応すれば良いのでしょうか?
避難所HUGは、そのような避難所運営の難しさを、模擬体験を通じて皆さんで考えられるゲームです。
避難者の年齢や性別、国籍やそれぞれが抱える事情が書かれたカードを、避難所となる体育館や教室に見立てた平面図にどれだけ適切に配置できるか。また避難所で起こる様々な出来事にどう対応していくかを模擬体験します。
プレイヤーは、このゲームを通して災害時要援護者への配慮をしながら部屋割りを考え、また炊き出し場や仮設トイレの配置などの生活空間の確保、視察や取材対応といった出来事に対して、思いのままに意見を出し合ったり、話し合ったりしながらゲーム感覚で避難所の運営を学ぶことができます。
六実三小の開催では、実際に六実三小の平面図を用い、より現実に則したゲームとなりました。実際に体験してみるとわかりますが、間髪を入れず次々と場に出てくるカードにてんてこまいになり、また他のプレイヤー達との意見が合わなかったりして、その解決をしていくうちに自然と対応に対するコンセンサスが醸成されていき、とても有意義な体験です。
避難所HUGは、地域各学校のほか、松戸市パートナー講座でも体験する事が可能です。
また6月22日(日)午後1時より、六実市民センター別館3Fにて避難所HUGが体験できるイベントを開催します。興味のある方は是非ご参加ください。
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